こんにちは。藤沢の歯医者「おだがき歯科クリニック」の小田柿です。
さまざまな方のご協力のおかげで、「おだがき歯科クリニック」が藤沢はオープンして1年が経ち、
私も歯科医師として12年目を迎えました。
研修医の頃から現在まで臨床に身を置き研鑽の日々を過ごす中で、
患者さんの「歯と健康」というものは、常に意識して診療に臨んでいます。
本日は七夕ということもあるので、願いをこめて今通院されてる患者さん、これから出会うことのあるかもしれない患者さんに向けて、歯科医師として皆さまへの思いを綴りたいと思います。
初めて受診された患者さんとお話をするときに、内科的なご病気などにより他科にかかっていた為、なかなか歯科を受診出来なかったというお話を頂くことがあります。
もちろん優先順位というものはあります。例えば、生命の維持に関わるような重篤な疾患であれば、そちらが優先になることは当然ですが、
患者さんにとって歯科は総じて緊急性が低いと判断されがちで、重要視されず、比較的後回しにされる傾向にあると感じることは多いです。
特に、初期の段階では痛みもなく、ほとんど自覚症状もなく進行していく歯周病については、より軽視されてきたように思います。
ですが、私が歯科医師だからより強く感じるのかもしれませんが、
誰しもが願う「一生楽しく、一生健康でいたい」を実現するためには、
健康的でキレイな歯と歯茎で「なんでも食べれる」、「おもいっきり笑える」ということは非常に重要な要素であり、
また、年齢を重ねることにより起こりうる様々な全身疾患を予防する為にも、「お口の中の健康」は絶対に欠かせないと考えています。
しかし、残念ながらそのことに気付けていない方がまだまだ多くいらっしゃるように思います。
ただ一方で、その方々は気が付いていないだけで、何かのきっかけで気付くことさえあれば意識は変化するはずです。
私たちは、当院を受診して頂いた方々に、その「気付き」のきっかけを作ってさしあげられたらと思い、問診(≒医療面接)では様々な内容を伺い、ブラッシング指導や細菌検査など必要に応じて行う診療メニューを考えてご提案しています。
「身体の健康づくりはまずお口から」
厚生労働省が5年ごとに発表している平成28年「歯科疾患実態調査」によると
毎日1回はブラッシングをするという方は95.3%、2回以上ブラッシングする方は77%という報告があり、毎日の歯磨き習慣は以前に比べてずいぶんと浸透してきています。
ですが、近年ライオン株式会社が報告した「歯みがき意識と口腔内実態の臨床研究」によると、事前アンケートで「自分の歯磨きに自信がある」と答えた人の実に8割は、きちんと磨くことが出来ていませんでした。
その理由は、その磨き方が自己流だったからです。
お子さんにはお子さん向けの虫歯予防の為の磨き方があり、
歯周病の予防という要素を加えた、成人の方向けのブラッシングというものはまた違います。
子どもの頃にはブラッシング指導を受けたことはあっても、大人になってから正しいブラッシングの指導を受けたことのある方は以外にも少ないのです。
口の中の健康を保つためには、毎日の歯みがきなどのセルフケアはとても大事です。
当院では、正しいブラッシングが出来るようになる為の、お手伝いが出来ればと、一度ブラッシング指導を受けて頂くことをオススメしています。
とはいえ、ご自身でのセルフケアのみでは十分にお口の中をケアすることは困難です。
それは、歯周ポケット内など歯の表面に付いたバイオフィルムと呼ばれる細菌の塊は歯ブラシだけでは完全には取り除けないからです。
そのため、歯科医院で定期的にチェックを受け、専門的な器具を使用したプロフェッショナルケアによりバイオフィルムを徹底的に除去する必要があります。
当院では、お口の中の環境にもよりますが、2~3ヶ月ごとのプロによるクリーニングを推奨しています。
また、近年は歯周病の治療が全身の健康維持につながるということが解明されてきており注目を集めています。
先程と同じく「歯科疾患実態調査」の報告により、35歳以上の大人の約8割が歯周病を抱えているというデータがあります。
たかが歯周病と思われるかもしれませんが、歯周病の恐さは、実は歯を失うことだけではありません。
歯周病を放置しておくと、知らぬ間にさまざまな病気の原因になることが、国内外の研究で解明されてきました。
ここ数年で相互に強い関係性があることが解明されてきた糖尿病をはじめ、
脳血管障害、心臓病、動脈硬化、肺炎、リウマチ、メタボリック症候群…
歯周病は全身の病気と関係している。歯周病の本当の恐ろしさはその点にあるのです。
お口は私たちの命を支える食べ物の入り口ですが、同時に、細菌の入り口でもあります。
歯周病菌は健康な口の中にも潜んでいて、活動するチャンスを狙っています。
歯周病菌の好物は、血液中の鉄分(ヘモグロビン)とたんぱく質。
口腔ケアを怠って歯周炎になり、歯ぐきから血が出ると、ここぞとばかり増殖を始めます。
歯周炎に限らず、口腔内を清潔に保つ役目(自浄作用や抗菌作用)を果たしている唾液の分泌量が減ったり、免疫力の低下など、お口の中の環境悪化は、歯周病菌の格好の餌食です。
たとえば高齢者の場合、骨密度が減って歯を支える骨がやせていく傾向にあるところに、歯周病や唾液の減少が重なれば、歯を失うだけでなく、さまざまな病気を引き起こします。
妊娠中の女性もホルモンの関係でお口の中の菌が増えやすく、歯肉炎、歯周炎になりやすい環境になります。
それらが出産に影響するメカニズムはまだ十分に明らかにはなっていませんが、重症の歯周病の場合、早産や低体重児の出産になる確率が高くなると報告されています。
こうしてみると、口腔内のケアは皆さんが考えている以上に大切なのです。
最近は予防歯科が重視されるようになってきています。
予防歯科とは、むし歯や歯周病などの治療ではなく、そうならないための予防を大切にする考え方です。
自分で行うセルフケアと専門家が行うプロフェッショナルケアを両方とも習慣にすることが、予防歯科の基本です。
歯科先進国といわれる北欧や米国では、80%の人がメインテナンスのために診療所に通っているといわれています。
日本では、まだ十分に普及してはいませんが、当院をはじめ予防歯科に力を入れる歯科医院も増えてきています。
お口の中の健康は、全身の健康につながっています。
健康的に生きるためには、予防歯科の考え方を持った「かかりつけ歯科医院」を持つことが必要です。
歯科医療の最先端では、お口の中だけでなく、全身疾患との関連を視野に入れた様々な新しい試みが始まっています。
口腔内を健康に保つことは、全身の健康にとって良い効果をもたらすと考えられます。
健康寿命を延ばすためには、お口のケアが欠かせないという認識を持ち、是非それを忘れないようにして頂けたらと願っております。